- 私は、20代の男性会社員ですが、女性の上司から度々飲みに誘われ、体を触られたうえ交際を求められ、誘いを断ったところ残業を押しつけるなど仕事上厳しく当たるようになりました。これは、セクハラ(性的嫌がらせ)に該当するのではないでしょうか?
- 従来は女性による男性へのセクハラの法的扱いは明確ではありませんでした。
平成19年4月施行の改正男女雇用機会均等法でセクハラの範囲が男性にも
広げられ、調停対象となりました。
問題は男性へのセクハラの認定基準が確立されていないことにあります。
女性へのセクハラに比べ男性への事例はまだ裁判例が蓄積されておらず、
平均的な男性が性的羞恥心(しゅうち)心を感じるか否かで判断されているのが
現状です。例えば性交渉を持ちかけたり、身体に触れてきたりする場合、セクハラと
認定される傾向にあります。
一方、単にしつこく酒席に誘ったり、恋人の有無を聞いたり、というケース
では、女性への場合と異なり認定されない公算が大きいといわれています。裁判例もまだ多くないため認定基準を見極めるのは難しいのが現状です。
防犯パトロール中の女性職員が、同僚男性がいる浴室に入った行為が
セクハラかどうかについて争われた訴訟では、一審では女性のセクハラ行為
を認定しました(大阪地裁2004年9月3日判決)が、
二審は女性に職務上の目的があったとして男性側の訴えを
棄却しました(大阪高裁 2005年6月7日判決)。セクハラとして認定されない場合は「パワー・ハラスメント」として
対処することになりますが、パワハラには法的規制がないため裁量権を
大幅に逸脱した事例でない限り救済は難しいようです。均等法改正で男性へのセクハラについても相談窓口を設置するなど、
防止に必要な措置が企業に求められるようになりました。
企業がこうした措置をとらないと違法とされ、裁判で使用者責任が問われます。
男性へのセクハラはあり得ないと企業側が放置していると、手痛いしっぺ返しを
食うことにもなり得ます。
「男性へのセクハラも、女性へのものと同様と認識することが必要」で、
企業はさらにセクハラ防止の意識をとぎすませる必要がありそうです。その際以下をポイントとして考慮しておくべきでしょう。
①女性へのセクハラに比べ、認定基準が不明確な面もある。
②男性に対するセクハラも企業の防止処置が必要である。