会社での研究を会社に無断で公表できる?

“私は、メーカー会社勤務の研究職です。私の研究成果が中々製品にならず気をもんでいたところ、出版社から「成果を論文にして発表しないか」と持ちかけられました。会社を辞めてでも発表したいのですが、会社に無断で大丈夫でしょうか。?”
研究開発を行う企業は、通常、「実験データなどを会社の事前了解なしに
第三者に開示してはならない」などと、就業規則や入社時の誓約書で研究や
ノウハウの公表を禁じています。
「会社に不利な行為はしない」という包括的な懲戒事由は、ほとんどの企業が
規則に盛り込んでいます。

会社に無断で研究を公表したり第三者に漏らしたりすれば、就業規則違反で
解雇も含む懲戒処分の対象となり得ます。
会社を辞めてからの公表であっても、研究の公表に伴う会社の逸失利益
について、賠償を求められるおそれがあります。

研究内容の社内での取扱い次第では、不正競争防止法(不競法)上の
「営業秘密」に当たる可能性もあります。

経済産業省によると、研究データなどが同法の営業秘密となるのは、
①データにマル秘マークを付すなど秘密として管理している、
②企業に役立つ、
③一般に知られていない、
といった条件をすべて満たす場合とされています。
製品開発などに絡み、社員が業務として取り組んできた研究であれば、
通常は営業秘密に該当すると考えられます。
その技術を生かした製品の独占販売ができなくなるなど、会社が損害を
受けるとわかっているのに研究内容を明かせば、不競法違反に問われかねません。

不競法に違反すると損害賠償と差止請求の対象となるほか、5年以下の懲役、
500万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
同法は損害賠償額算定方法を明示しており、研究内容が営業秘密であれば、
そうでない場合より会社側は賠償を求めやすいとされているので注意が必要です。