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- 欠勤が多い社員に対して、給与・賞与は,賃金規程に従って欠勤日数分の支給額を減額していましたが、その社員が退職する場合も、欠勤日数に応じて退職金を減額しても(尚、退職金規程には「欠勤日数に応じた退職金の減額規定」は設けていません)問題はないのでしょうか?
- 「退職金制度」は、法律上設けることを義務付けられていませんので, 仮に「退職金制度」がなくても問題になることはありません。 但し、就業規則などによって,退職金の支給条件などが明確に 定められている場合には,退職金は単なる恩恵的な給付ではなく, 労働基準法上の賃金に該当することになります。 本ケースでも退職金規程に従って退職金を支給しているとのこと ですので,退職金は労基法上の賃金に該当することになります。 「退職金制度」については,労働基準法(89条3号の2)により、 「退職手当の定めをする場合においては,適用される労働者の範囲, 退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の 時期に関する事項」を就業規則に記載しなければならないとされています。 そして,退職金の不支給または減額事由を設ける場合,これは上記の 「退職手当の決定,計算及び支払の方法」に関する事項に該当しますので, 就業規則に記載しなければなりません。 したがって,退職金規程の支給条件を満たす者に対して退職金を 支給しなかったり,減額規定がないにもかかわらず退職金額を 減額して支給したりすることは,賃金の支払いについて定めた 同法24条違反となります。 但し、退職金規程に不支給・減額条項を定めることは可能ですか, 不支給・減額条項があるからといって,必ずしも退職金の不支給・減額が 認められるわけではありません。裁判例では, ①「退職金の全額を失わせるに足りる懲戒解雇の事由とは,労働者に 永年の勤続の功を抹消してしまうほどの不信があったことを要し, 労基法第20条但書の即時解雇の事由より更に厳格に解すべきである」 (橋元運輸事件,47.4.28名古屋地判), ②「退職金の全額を失わせるような懲戒解雇事由とは,労働者の過去の 労働に対する評価を全て抹消してしまう程の著しい不信行為があった場合 でなければならない」(トヨタ工業事件,平6.6.28東京地判)、などとされて いるからです。なお,退職金の減額については,一部は退職金が 支給されることから,全額不支給の場合ほどの事由は求められず, その行為の程度と減額の程度から判断されることになります。 いずれにせよ,退職金規程に減額規定がない場合は,退職金を減額して 支払うことはできません。尚,退職金の計算方法は労使間で自由に決定 することができますから,例えば,退職金規程の定めにおいて,在職中の 出勤率などによって退職金額の支給率などに差を設けることは問題ありません。 ご不明な点等あれば、弊社にお尋ね下さい。
(2021年1月27日)