- 私は、A社で働いている社員ですが、転職先を探して B社の面接を受けたところ、その場で採用担当者から口頭で, “採用する。2カ月後には来てほしい”と言われましたので、A社にすぐ退職届 を出しました。 ところが、その後B社が“採用するつもりはない”と態度を変えました。 私は、B社に対して、内定取り消しとして損害賠償を求めることは可能でしょうか。?
- 法律上、内定は、「始期付解約権留保付労働契約」として一定の拘束力を
持ちます。一般の解雇よりも基準は緩いですが、合理的な理由なしに契約を取り消す
ことはできません。では、どのような状態なら「内定成立」といえるのかですが、一般的に、
雇用する側と雇用される側の意思が合致し、両者の合意があったと
みなされた時点で内定は成立するとされています。重要なのは、この「合意の有無」であり、口頭での約束か文書かは
判断基準ではないとの考えが一般的です。ただ、口頭での採用の意思表明は、裁判時の証明が難しいという
難点があります。
その場合は、身体検査の実施や就業規則の交付などが状況証拠に
なるといえます。
また、新卒採用と中途採用では合意の判断に若干違いがあります。新卒の場合、試験や面接を経て夏頃までにいったん採用が決まっても、
多くの場合、内定通知書の受け渡しや誓約書への署名などの手続きは
10月ごろに行われます。新卒者は何社もかけもちで就職活動を行い、いくつか内定をもらった中から
進路を選ぶことが前提のため、誓約書への署名などの前段階で示される
企業側の採用の意思表示は「内々定」として一連の手続き後の内定よりは
法的な拘束力が緩いといえます。一方、中途採用の場合は、通常、何社もかけもちで内定を取ることは
考えにくいので、企業から採用の意向を示された時点で両者の合意が
形成されたとみなされ、内定が成立するといえます。企業の人事権者が、「採用します」、「○月○日から来てください」などと
伝えた場合は口頭でも合意が成立したといえるでしょう。
ただ、紹介者などその企業の人事権者以外から伝えられた採用の意向は、
内定とは認められません。また、賃金などの条件が話題に上がっていた場合に、それが折り合わない
ままでは合意があったとは言い切れないでしょう。