任意参加の研修旅行中の労災は?

任意で参加した会社の研修旅行中に飛行機事故で無くなった社員の遺族が、労災給付(遺族補償給付)を求めていますが、受けることが出来るのでしょうか?
労災認定がなされるためには,災害が「業務上」生じた ものでなければならず,具体的には災害につき 「業務遂行性」と「業務起因性」の双方を有することが 必要となります。また,災害が「業務遂行性」を有する ものといえるためには,災害が起こったときに被災 労働者が労働契約を基礎として形成される使用者の 支配下にあったと認められることが必要となります。 わが国の企業においては,従業員の労務管理上 有効な手段として社内研修旅行を催したりすることも あります。 然し、これは本来的な業務遂行ではありませんし, その業務に通常伴うべき行為であるとも言えない面 もあります。 従業員の立場からみると、研修旅行は気分転換として の要素もあることから自発的に参加している一面も ありますが,他方で業務との関連性もあることから 参加が業務の一環として拘束感を持って受け止めて いる面もあります。 そこで,研修旅行において従業員が死亡した場合に、 それが「業務上の死亡」といえるのか,具体的には 「業務遂行性」があるのかが問題となります。 「業務遂行性」を認定する上において重要な判断要素は, 災害時に従業員が「使用者の支配下」にあったか否か という点にあります。その判断をするに際しては, ①研修旅行の訪問先に業務と関係する施設への訪問が 予定されていたか, ②観光と研修を目的とする先への訪問との割合、 ③研修旅行における費用の自己負担の有無および割合, ④研修旅行参加者の研修旅行中の賃金支給の有無, ⑤不参加者の割合等を総合判断することになっています。 この点参考となる通達(「運動競技に伴う災害の業務上外 の認定について」平12.5.18 基発366号)では, ①出張または出勤として取り扱われること, ②必要な旅費等が事業主負担であり,労働者負担でない ことを業務上災害の要件としています。 同種事案における裁判例としては,旅行の訪問先が主に 主要観光場所であったこと,研修を目的とした訪問先も 予定表には土産物のショッピング先と記載されていたこと, 旅行参加者への賃金支給についても前年までは実施し ておらず,本件事故後に社長の指示により行われたこと, 不参加者も31%の高率におよび参加の強制もなされては いなかったこと等の理由から,「業務遂行性」はないものと 判断された事案があります。(岐阜地判平13.11.)。 このように研修旅行中の災害が、労災か否かについては、 ケースバイケースで判断されますので、慎重な対応が 必要でしょう。
(2019年6月27日)