- 当社では、来年から一部社員(非管理者)にも年棒制をとることになりましたが、年棒制は残業代は不要なのですか?
- 雇用環境が変化する中で、賃金の決定に際し、
労働時間をベースとする従来の制度ではなく、年俸制を
導入する企業が増えてきています。年俸制は賃金を
年単位で決定するというだけでなく、前年度の業績の
評価などに基づいて労働者と雇用者の間で交渉
によって決定されるという特徴があり、管理職や専門職、
営業職などで採用されることが多いようです。
年俸制は事前に年間の賃金額が決定されることから、
時間外労働に対して割増賃金を支払う必要がないと
誤解している企業も少なくないようです。
然し、たとえ年俸制の労働者であっても、時間外労働や
休日労働をさせれば、原則として割増賃金を支
払わなければいけません。
①割増賃金を支払わなくてよい場合
時間外労働や休日労働に対して、割増賃金を
支払わなくてもよい場合として、管理監督者、裁量労働や
事業場外労働について「みなし労働時間制」が適用
されていて、「みなし」によって処理される労働時間が
1日に8時間を超えない場合などが考えられます。
ただ、管理職すべてが労働時間などの適用が除外される
管理監督者となるわけではないこと、管理監督者であっても
労働契約外の労働に対しては別途賃金の支払いが
必要なこと、管理監督者であっても深夜労働については
割増賃金の支払いが必要なことなどについては注意が
必要です。
②割増賃金を支払う場合
一般の従業員に年俸制を導入し、時間外労働などをさせた
場合、基本的に割増賃金を支払わなければなりません。
それは、年俸額は所定労働時間の労働に対する賃金
として定められているのが一般的であるため、時間外労働
などに対する割増賃金が当然に含まれているわけではない
からです。
年俸額の内、いくらかが割増賃金相当額なのか明確に
定められている場合には、実際の割増賃金額がその
割増賃金相当額に達するまでの時間外労働に対して、
別途割増賃金を支払う必要はありません。
③割増賃金の定額払い
割増賃金の支払いが必要な従業員に年俸制を導入する
場合、割増賃金をとりあえず定額で支払うという方法が
あります。定額払いされた割増賃金の総額が、法所定の
計算方法によって算定された割増賃金の総額を下回らない
限り違法とはなりません。法所定の割増賃金を下回る
場合には、定額払い額と法所定の割増賃金額との差額
を支払わなければなりません。このような扱いをする場合、
通常の労働時間に対する賃金と割増賃金に相当する賃金
が区別できるようになっている必要があります。
現在の「労働法」法制は、労働者保護の色彩を強くして
いますので、労働基準監督署の立入りでも、最も多く指摘
されるのが、残業問題です。多くの企業がこの問題に頭を痛
めていますが、対応の難しい問題も多く“大丈夫と思って
導入した制度”が「法違反だった」というケースも散在
しています。是非一度私共専門家にご相談下さい。(2015年3月27日