- 遅刻や早退を頻繁に繰り返したり,欠勤を断続的に行ったりしている従業員にたいして、電子メールで解雇通知をしたところ、本人から,電子メールで「解雇の理由を記載した書面を郵送してください」との連絡がありました。電子メールで解雇理由証明書を送信しても差し支えないないでしょうか?
- 労働者が解雇された場合,当該労働者から使用期間,
業務の種類,その事業における地位,賃金または
退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては,
その理由を含む)についての証明書(解雇理由証明書)
を請求されたときには,使用者は,これを遅滞なく交付
しなければなりません(労基法22条1項)。
そして,この規定に違反すると,30万円以下の罰金という
刑罰が予定されています(同法120条1号)。このように,解雇理由証明書を使用者が交付しなければ
ならないとした理由は,解雇理由の明示によって不当な
解雇を抑制するとともに,解雇に関する紛争の自主的な
解決の促進を図ることを目的とするものと説明されています。
それでは,このような解雇理由証明書の交付を,電子メール
で送信する方法で代えることはできるのでしょうか。
この点,例えばパート労働者に対する特定事項の明示
については,パート労働法6条1項が「事業主は,短時間
労働者を雇い入れたときは,……労働条件に関する事項の
うち……厚生労働省令で定めるものを文書の交付その他
厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない」,
同施行規則2条2項において「電子メールの送信の方法
(当該短時間労働者が当該電子メールの記録を出力する
ことによる書面を作成することができるものに限る。) 」と
定め,電子メールによる方法での明示を許容している
場合もあることからすると,解雇理由証明書についても
電子メールで送信する方法でも可能なのではないかとの
考えがあるかもしれません。
しかし,解雇理由証明書の交付義務を定めた労基法
22条1項は,「労働者が,……証明書を請求した場合に
おいては,使用者は,……交付しなければならない」
と定めており,書面そのものを交付することを予定して
いること,労基法22条1項には,パート労働法のような
「文書の交付その他厚生労働省令で定める方法」との
定めがないことからすると,電子メールにより
解雇理由証明書を送信することはできないと
考えられています。
なお,解雇理由証明書に記載する事項ですが,通達に
おいて「『解雇の理由』については,法第22条第1項に
基づく請求における場合と同様に,具体的に示す必要
があり,就業規則の一定の条項に該当する事実が存在
することを理由として解雇した場合には,就業規則の
当該条項の内容及び当該条項に該当するに至った
事実関係を証明書に記入しなければならないもの
であること。」( 平成15年12月26日基発1226002号)と
されていますので,ご注意ください。(2014年11月28日)