営業社員の“息抜き”は懲戒処分の対象?

当社では先日、営業社員が外回りで営業しているはずの時間に、喫茶店で休憩しているところを上司に見つかってしまいました。上司は“社員全員で業績拡大に取り組んでいるときにどういうことだ! 懲戒処分を覚悟しろ!”とその社員を怒鳴りつけましたが、喫茶店での息抜きが、本当に懲戒処分に該当する行為なのでしょうか?
就業時間のほとんどを事業場外で働く営業社員の場合、自分の裁量で 休憩時間をとる人は少なくありません。しかし、上司や同僚の目が 届かないため、一定の営業成績を上げる見込みが立つとリフレッシュ するための休憩も長時間になりがちで、中にはパチンコや映画に興じる人 もいるようです。 労働基準法では「労働者が労働時間の全部または一部について事業場外 で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、 所定労働時間労働したものとみなす。」(38条の2前段)と 規定しています。 この条文の趣旨は、労働時間を把握できない事業場外で働く社員にも 所定労働時間分の給与を払うというものです。会社が 「きちんと働いているかどうかわからない」などとして、社員の給与を 一部カットすることや、不払いにすることは法律上認められていません。 社員が「裁量労働制」の対象であれば、自ら労働時間を配分でき、 通常の就業時間に働かずに他の時間に働いても問題はありません。 もっとも、「裁量労働制」を適用できるのは技術開発やデザインの考案 など労働基準法の施行規則に列挙された一部の職種に限られます。 営業職は適用外であり、就業時間にさぼっていれば職務専念義務違反で 懲戒処分の対象となる可能性があります。 労働基準法は、労働時間6時間超で45分以上、8時間超で1時間以上の 休憩を与えることを規定しており、会社は事業場外で働く社員にも休憩を 与えなければなりません。 また、営業活動の合間に短時間、喫茶店に寄っても、社内でお茶を飲むの と同じで、通常、許容される気分転換の範囲内とされています。 よって営業社員の息抜きのポイントは、 ①短時間の休憩は通常、許容される気分転換の範囲内 ②長時間の休憩は職務専念義務違反の可能性あり と認識しておくべきでしょう。