- 当社の社員が忙しさにかまけて、会社で年1回実施している定期健康診断を受けません。会社としては「受診を拒否すると減給などの処分もあり得る」と強い態度に出ましたが、本人は「定期健康診断を受けるかどうかは個人の自由だ」と主張し、中々健康診断を受けません。どうしたらよいでしょうか?
- 労働安全衛生法66条は、企業の健康診断について事業者には実施を、労働者には 受診を義務付けています。 (労働安全衛生法で定められている定期健康診断の主な項目) 1.既往歴および業務歴の調査 2.身長、体重、視力、聴力の検査 3.胸部エックス線検査及び肝機能検査 4.尿検査 5.貧血検査、血中脂質検査、血糖検査 ※(本人の承諾なしに法定検査項目以外の検査をすると、プライバシー侵害が 問われることもあります。)
労働安全衛生法は労働者に対する罰則規定は設けていませんが、事業者や
産業医が再三受診を促しても、社員が強硬に受診を拒否した場合、事業者は
その労働者を懲戒処分にすることも法的には可能です。
具体的には、出勤停止未満の処分が一般的で、譴責や戒告、重ければ減給
とする場合もあり得るかもしれません。
懲戒処分にするかどうかの裁量は事業者側にありますが、実務上は、衛生や
健康問題に特別配慮すべき職場以外では、健康な労働者が定期健康診断を
受診しなかったという理由だけで、雇い主が処分した事例は殆んどない
ようです。
然し、業務に支障をきたすような症状が出ているのに、会社からの受診命令
を拒んだ場合は、健康回復努力義務違反とみなされる場合はあります。労働安全衛生法66条5項は、事業者が指定した医師の健康診断を受ける
ことを望まない場合は、他の医師の診断を受け、結果を証明する書面を会社
に提出してもよいとしています。然し、労働者が選択した医療機関の受診結果
について事業者が疑問を持つ合理的理由がある場合は例外とされています。
定期健康診断のポイントは、
①事業者には健康診断の実施義務、労働者には受診義務があること、
②受診拒否は健康回復努力義務違反になる場合もあることだ
と纏める事が出来るでしょう。