平成19年3月の閣議決定を経て長らく国会審議入りしていた
「改正労働基準法案」が、1年8カ月を経て、ようやく成立しました。
本法の施行は平成22年4月とまだ先ですが、「月の時間外労働が
一定時間を超えた場合の賃金割増率のアップ」と「労使協定締結
による5日以内の時間単位での年次有給休暇制度の創設」が
大きな柱である本改正は、今後の労務管理実務に大きな影響を
与えるものです。主要改正点は、以下の通りです。
①改正労働基準法の内容
本改正の1つ目の柱は、「月の時間外労働が一定時間を超えた場合の
賃金割増率のアップ」です。月の時間外労働時間が45時間を超え
60時間までの場合の割増賃金率については、2割5分以上の率で、
労使協定で定める率とし(努力義務)、60時間を超えた場合の割増賃金
については5割増とする、という内容です。
上記の「60時間」の部分については、当初の案では「80時間」とされて
いましたが、野党などの強い反対により、審議のうえ修正されました。
本改正のもう1つの柱は、「労使協定締結による5日以内の時間単位
での年次有給休暇制度の創設」です。労働者の過半数で組織する
労働組合等との労使協定で「時間単位で有給休暇を与える労働者の範囲」、
「時間を単位として与えることができる有給休暇の日数(5日以内)」などを
定めることにより、従来よりも細かい単位で有給休暇を取得できるとする
内容です。
時間単位で細かく取得できるようにすることにより、近年落ち込んでいる
有給休暇取得率アップにつなげることが、本改正の目的です。
②施行日と中小企業への猶予
改正法の施行日は「平成22年4月1日」と定められており、企業に
おいては就業規則の整備や労使協定の締結などの対応が
必要となりますが、割増率のアップの規定については、
「中小事業主の事業については、当分の間、適用しない」と
されています。
なお、ここでいう「中小事業主」とは、「その資本金の額等が3億円
または、常時使用する労働者の数が300人以下(一般事業)など
一定の要件をクリアーした事業主を云います。