国民年金や厚生年金の記録漏れ問題の全容解明も途中だというのに、
今度は企業年金の未払いが明らかになりました。
転職などによって厚生年金基金を脱退した人の年金資産を引き継いでいる
企業年金連合会が、先日、124万人に年金を支給していないことを発表しました。
未支給額は累計1544億円になるといいます。
企業の厚生年金基金が解散したり、転職して短期間で基金の加入資格を
失ったりしたとき、加入者の年金資産は企業年金連合会に移ります。
企業年金連合会は、こうした人の資産をまとめて運用し、各人の加入期間に
応じて年金給付をしています。
現在は、2,400万人の年金記録を管理し、276万人に年金給付を行っています。
年金が未払いになっている124万人という数は、この約半数に達します。
企業年金連合会は、未支給者がこれだけいる理由について、その大半は
支給開始年齢に達したときに支給開始の手続きをとることができないためだ
と説明しています。
年金を受け取るには、本人が企業年金連合会に請求手続をする必要があります。
これを申請主義と云いますが、この「申請主義」を補うため、加入者が60歳になる
直前に請求手続をとるように通知する仕組みが導入されています。
しかし、住所を追跡把握していないため、特に若いころに厚生年金基金を脱退した人
には手続きが必要なことを知らせるのが難しいのが現状です。
こうした人の多くについては、請求手続が行われないため、年金の支給も
開始されません。
未受給者の中には、自らの意思で権利を放棄したわけではなく、
申請手続の必要性を知らなかったために未受給となっている人も数多く
含まれている模様です。
企業年金連合会はフリーダイヤルを開設し、100人体制で相談に応じること
にしています。また、社会保険庁に対して加入者の住所情報の提供を求め、
来春以降、企業年金の中途脱退者などに定期的に年金記録を通知すること
にしています。
企業年金連合会には13兆円の積立金があり、仮に未支給の1,544億円の
全額を支払っても、財政への悪影響は限定的です。
企業年金連合会はこれまで豊富な運用資産をバックにガバナンスの改革を
迫ってきました。日本最大の「モノ言う株主」ですが、顧客に当たる加入者情報
の管理強化など、自らのガバナンス見直しも迫られそうです。