賃金等請求権の消滅時効

厚生労働省の賃金等請求権の消滅時効の検討会は、
7月1日、報告書を公表しました。この報告書は、
現在一律2年とされている賃金や年休に関する権利等
について、改正民法において短期消滅時効に関する規定が
整理されたことを受け、どのように見直すべきか方向性を
示したものです。
 改正民法施行後は、
①債権者が権利を行使することができることを知った時から
5年間行使しないとき、または
②権利を行使することができる時から10年間行使しないときに
時効消滅することとなります。
 現行の労働基準法115条では、「賃金(退職手当を除く)、
災害補償その他の請求権は2年間、この法律の規定による
退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、
時効によって消滅する」と規定されているため、改正民法に
合わせた場合、未払い賃金訴訟や年休の繰越し等で
企業実務に大きな影響を及ぼすため、改正民法とは別に、
検討されてきました。

 報告書は、賃金請求権について、
「2年のまま維持する合理性は乏しく、労働者の権利を
拡充する方向で一定の見直しが必要」としています。
未払い賃金訴訟等で使用者に支払いが命じられ
る付加金についても併せて検討することが適当、
とされています。
 さらに、労働者名簿や賃金台帳等、3年間の保存義務が
課される記録の保存についても、併せて検討することが
適当、とされています。
 なお、年休については賃金と同様の取扱いを行う必要性
がないとして、2年を維持する案が示されています。
 見直しの時期については、改正民法が2020年4月1日
から施行されるのを念頭に置いて速やかに労働政策審議会
で検討すべきとされており、今秋から議論が始まります。
既に経過措置に関する案も2つ示されており、今後の動向
が注目されます。

(2019年7月26日)
 今春から施行された改正労働基準法により労働時間管理の厳格化が求められているところですが、賃金等請求権の消滅時効が改正されれば、万が一未払い賃金が生じたときに重大な影響があるため、自社で適切な管理がなされているかどうかを改めてチェックし、未払い賃金等の問題には早期に解決しておく必要があるでしょう。