パタハラ

  厚生労働省「平成30年度雇用均等基本調査(速報版)」
により、最新の育児休業取得率(調査対象事業所に
おける、出産者(男性の場合は配偶者が出産者)のうち
育児休業を開始した者の割合)が判明しました。
女性の取得率は82.2%で、10年以上高水準で安定し
ています。その一方、男性の取得率は6.16%ということで、
6年連続で上昇はしていますが、依然としてきわめて低調です。
そのような中、6月5日、自民党の有志議員が「男性の育児
休業義務化」を目指す議員連盟の設立総会を開きました
。議連は、本人からの申請がなくても、企業から「育児休業を
取らないのか」と促すことを義務付ける仕組みの制度化を
目指すとし、育介法の改正などを視野に活動するとして
います。
おりしも、大手化学メーカーにおいて、パタニティ・ハラスメント
(男性の育休取得者への嫌がらせ)疑惑が取り沙汰されて
います。報道等によれば、ある男性社員が約1カ月弱の
育児休業休暇を取得したところ、職場復帰した翌日に転勤を
命じられ、その後の転勤時期をずらす交渉等もまとまらず、
退職を余儀なくされたといいます。男性の妻が、社名を
ほのめかした発信をTwitter上で行い、またたく間に
社会問題化してしまいました。
同社は「くるみん」(厚生労働省による子育て支援に積極的な
企業への認定マーク)を取得していたため、前述の議連
からも「くるみんを取得していても、あのような事例があったのは
残念」と名指しでコメントされる等、望ましくない事態となっています。
法律上、使用者は「労働者の子の養育(略)の状況に配慮しな
ければならない」(育介法26条)とされていますし、必要性のない
配置転換であれば「権利の濫用」(労契法3条5項)とみなされる
恐れもあります。また、違法性がないとしても、ハラスメント行為と
世間から見なされることとなれば、今回の大手化学メーカーの
ように大きなイメージダウンとなり、企業活動にも支障をきたす
ことになるかもしれません。
法律の正しい理解と、ハラスメントを生まない職場づくりが
求められます。

(2019年6月27日)