「持ち帰り残業」の実態とリスク

連合総合生活開発研究所(連合総研)が民間企業に
勤める社員対象に実施したインターネット調査によると、
社員全体の30.9%、正社員の54.5%が「持ち帰り残業」
をしたことがあると回答したことが明らかになりました。
また、勤務時間以外に行った業務・作業について、
「メール・電話・SNSの対応」は46.8%、「呼び出しを
受けて出勤」は28.5%が、経験があると回答しました。
持ち帰り残業を行った時間については、
1カ月あたりの平均持ち帰り残業時間数は5.5時間
でした。さらに、1週間の実労働時間が50時間以上の
長時間労働者の1カ月あたりの平均持ち帰り残業
時間数は、10時間前後という結果になりました。
最近では、「○時にオフィスの完全消灯」とか
「○時にパソコンの強制シャットダウン」等々を行うこ
とにより、早く退社するよう呼びかけている企業が
増えています。
そのため、社員のほうでは、会社で働ける時間が
減り、やむなく帰宅後や休日に自宅等で仕事をする
時間が増えてしまっているようです。
持ち帰り残業は、会社以外での仕事となるため
就労実態の把握が難しいとされています。
2011年に英会話学校講師の女性が自殺した事件で、
女性は自宅での長時間の「持ち帰り残業」や上司
からの叱責による心理的な負荷が重なり、うつ病を
発症していたとして労災が認定されました。
持ち帰り残業を黙認し、社員が自宅での仕事中に
死傷病等の災害を被った場合には、会社は労災や
損害賠償の責任が問われます。
勿論、社員の持ち帰り残業が常態化し、会社が
黙認していれば、長時間労働による健康被害の
会社責任は、免れません。
また、社員がノートパソコンや書類等を自宅に
持ち帰る際に、紛失や盗難に遭う可能性もあります。
そこに個人情報や企業秘密が含まれていれば
情報漏洩のリスクも生じます。
このように持ち帰り残業には様々なリスクがあるため、
それを見て見ぬふりをするのではなく、発生させない
ための防止策の検討、部署等での協力や業務の
見直しが何よりも求められるでしょう。

(2017年12月28日)