先般、厚生労働省社会保険審査会は社会保険事務所が行った”社会保険の加入漏れがあった事業所に2年間さかのぼって社会保険に加入させる”との命令を無効とする裁決をしました。これは平成13年5月に大阪市内の社会保険事務所に会計検査院の調査が入った際、会計検査院から市内の飲食店が約70名のパートタイマーを社会保険に加入させていないことを指摘され、それを受けた社会保険事務所が、その飲食店に対して”約2年前にさかのぼって社会保険に加入し、社会保険料など約6000万円を支払へ”との決定をしたことについての係争事件です。飲食店では調査後に一度社会保険加入の手続きを行いましたが、すぐに取下げを請求しました。然し、これが却下された為に、社会保険審査会に再審査請求を行い再審査請求で、この保険料徴収を無効とする裁決を行ったとの事情なのです。無効とした理由は、昭和63年の社会保険事務所の調査では指摘をせず、その後も指導を行わなかったにも拘らず、平成13年の調査で突然、2年前にさかのぼって社会保険に加入させ、保険料の支払を求めたことは妥当性を欠くとしたものです。今後、全国各地で見受けられる同様の事案についての各社会保険事務所の対応が注目されます。
(2003年11月)