厚生年金基金とは企業年金制度の一部分で、国民年金、
厚生年金保険に上乗せする「3階建て部分」にあたるものです。
「代行」と呼ばれる形で公的年金の一部を国に代わって運用
する他、基金独自の年金も組合わせて上乗せ給付しています。
厚生年金基金制度は、1966年にスタートし、90年代後半には
全国で1800を超える基金に約1200万人が加入していました。
基金を巡る情勢が一変したのは、「確定給付企業年金法」が
施行となった2002年以降です。
将来的な基金運営の厳しさを見越し、大企業を中心に運営して
いた「単独型」基金が、代行部分を国に返上した上で基金を
廃止する動きが広がったのです。
現在残っている基金は、中堅・中小企業が業種別等に集まって
設立した「総合型」が殆どとなっています。
残された基金の財政は厳しい状況です。12年3月末時点では、
約4割で国に代わって運用している資産(代行部分)に欠損が生じ、
いわゆる「代行割れ」と呼ばれる状態にありました。
アベノミクス相場が始まり株価上昇の恩恵を受けた13年3月末
でも約2割が代行割れから抜け出せていない模様です。
多くの基金は年金を独自に上乗せしている部分について
5.5%の予定利率を掲げていますが、最近5年間平均の
基金全体の運用利回りは僅か0.83%に留まっており、
予定利率と実際の運用利回りとの差額は、基金加盟企業
の負担増による掛金増額で補填等をして行かない限り、
積立不足に拍車をかける結果となっています。
問題はこれだけではありません。
退職者に払う給付金と現役社員が負担する掛け金の
バランスも崩れているのです。掛金総額を給付費総額が
上回る状況が、09年度以降続いているのです。
解散するか、それとも他の制度に移行するか──。
退職者が増える中で、各基金は難しい選択を
迫られています。
厚生労働省は3月18日の社会保障審議会の部会で、
去年3月末の段階で全国に560あった基金のうち、
21の基金がすでに解散し、175の基金が解散に
向けた手続きを進めていることを明らかにしました。
また、厚生年金基金は国に代わり公的年金の一部
を運用していますが、解散に向けた手続きを進めて
いる175の基金のうち76の基金では、公的年金の
支給に必要な資金が不足する『代行割れ』の状態
になっているとのことです。
本年4月1日から「公的年金制度の健全性及び
信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を
改正する法律」が施行され,かつての適格退職年金と
同様に10年かけて厚生年金基金制度が原則廃止されます。
今後,それぞれの厚生年金基金は代行部分に対する
純資産額の積立状況に応じて、(解散、他制度へ移行)等
の選択肢の中から対応を決定することとなります。
(2014年4月26日)