「今後、公的年金が減少して行く中,自社の退職金水準が低いので、
従業員の老後のため,何らかのサポートをしてあげたいが、
退職金水準を引上げるだけの財源が確保できない」というジレンマを
抱えている企業があります。
その場合には、「個人型確定拠出年金を活用するのも一法です。
[個人型確定拠出年金の概要]
確定拠出年金には,「企業型」と「個人型」の2つの形態があります。
企業型は,企業が企業年金制度として導入してその従業員が加入する
もので,掛金も企業が負担します。一方,個人型は,国民年金基金
連合会が実施し,個人が任意で加入するもので,従業員が自らのお金を
掛金として拠出します。
個人型の掛金の月額限度額は,国民年金の第1号被保険者は68,000円,
第2号被保険者は23,000円です。その掛金については全額,所得控除の
対象となります。
運用時は,企業型と同様で,資産残高には特別法人税が課税されますが,
現在は凍結中です。
給付の種類は,老齢給付金・障害給付金・死亡一時金の3種類です。
老齢給付金と障害給付金は5年~20年の有期年金として支給され,
具体的な年金の受取方法は運営管理機関が設定します。
なお,年金として受給した場合には,公的年金等控除,一時金として
受給した場合には退職所得控除が適用されます。
個人型確定拠出年金には多くの税制優遇があるにもかかわらず,
そのメリットを知らない(個人型の確定拠出年金の存在自体さえ
知らない)人も多く,従業員に当制度を教えてあげるだけで喜ばれる
ケースもあります。
[企業による自助努力サポート]
個人型確定拠出年金を活用して老後生活資金を準備する従業員には,
従業員各人が金融機関に支払う手数料を,福利厚生制度の一環として
企業が負担するという支援制度を導入する方法があります。
退職金水準は引き上げることが出来なくても,個人型確定拠出年金の
手数料を企業が負担する程度であれば,1人につき年間数千円なので
大幅な負担増にはなりません。
更に、この制度は,社員の自助努力をサポートする趣旨からも適切と
言えるでしょう。
[メリットとデメリットも伝える]
個人型確定拠出年金はあくまでも自己責任で行うものです。
よって,従業員の理解が不十分なままで加入を煽ることは
避けなければなりません。
企業が手数料負担を福利厚生制度の一環として導入するのであれば,
個人型確定拠出年金の基本的な仕組みや税制優遇を始めとした
メリットを伝えるとともに,反面、デメリットがあることも
伝える必要があるでしょう。
その点を十分に踏まえたうえで採用するのであれば,
個人型確定拠出年金は従業員の老後資産形成の大きな一助に
なると思われます。
(2013年3月8日)