退職金制度の廃止

適格年金制度が廃止されたことに伴い退職金制度そのものを
廃止した企業があります。
適年を解約して従業員に分配する場合のデメリットや注意点
としては、「①解約分配金が一時所得になり税金負担が重い」,
「②適年の廃止=退職金制度の廃止ではない」ということですが,
解約分配を実施した企業の中に,そのデメリットや注意点を
正しく理解しないで実施した企業も少なくないようです
(ここ1~2年,適年の解約分配と同時に退職金制度を廃止する
企業が増加していますが,その際に,かなり乱暴な処理をしている
企業もあるようです)。
また,適年廃止以外にも「退職金財源の積立てが負担だから」、
「制度運営が面倒だから」などといった理由で退職金制度の廃止を
検討している企業もあるようです。
先行きの見えない経営環境下で,退職金制度を廃止したいという企業
の意向もわかるのですが,退職金制度を廃止する前に,もう1度,
自社の退職金制度の意義を考えてみることをお勧めします。

例えば,自社が退職金制度のない会社になってしまってよいかと
いうことです。ちなみに,大企業を中心に退職金制度を廃止して
退職金の前払い制度を導入しているところもありますが,大企業は
退職金制度を廃止したとしても,給料や賞与さらには福利厚生制度が
充実しています。
一方,中堅・中小企業の場合,大企業のそれに比べるとやはり
どうしても見劣りしてしまいます。今年4月から公的年金の支給開始は
61歳に引き上げられ,その後段々と65歳支給開始に引き上げられて
行きますし、年金額自体も減少して行く傾向にあります。
それを補うものの1つとして退職金の必要性は益々高まって
行くでしょう。
そう考えると,やはり退職金制度の存在意義は十分にあるようです。

最近のコンサルティングの現場では,従業員の多国籍化,事業拠点の
海外移転に伴い,退職金制度の考え方を根本から見直さざるを得ない
企業や,高齢者処遇施策(定年年齢・継続雇用制度・早期退職優遇制度
・役職定年制等の見直し)の検討と併せて退職金制度を見直す動きが
増えています。
一昔前には考えもしなかったことかもしれませんが,企業の置かれて
いる環境の変化に伴い,人事施策の一環としての退職金制度の存在意義
が変わっているのも事実であり,今後はさらにその傾向が強まることが
予想されます。
 退職金制度を継続する場合は,長期間にわたり運用していくことに
なります。
また,廃止する場合には,それに代わる施策を併せて検討する必要も
あります。
いずれにせよ,他企業の動向や金融機関の意向に流されることなく,
自社にとって何が最適であるかをよく検討して改革を進めて行くことが
肝要でしょう。
疑問等ある場合は、お気軽に弊社にご相談下さい。

{2013年1月29日)