国民年金の現状

 社会保険庁の最新の発表によりますと国民年金の未納率は、37.2%、その内年収1,000万円を超える人の数は、20万人にもなるとのことです。何故こんなにも多くの人が国民年金に魅力を感じていないのでしょうか。勿論、社会保険庁の怠慢が一因であることは否めません。社会保険庁が徴収事務をもっとしっかりやっていれば、未納分のある程度は防げたことは間違いないでしょう。
然し、それにしても滞納している人が多すぎる、とは思いませんか。年金制度は、本当に不利なものなのでしょうか。
国民年金は、老齢基礎年金・障害基礎年金・遺族基礎年金に大きく分けることができますが、未加入・未納者たちが保険料を支払わない主な理由は、老齢基礎年金にあるようです。
老齢基礎年金は原則的に65歳から貰えるもので、国民年金被保険者に限らず厚生年金保険被保険者・共済組合員等も、いわゆる1階部分として貰います。
未加入・未納されている方々は、その理由を「老齢基礎年金が将来ちゃんと貰えるのか不透明だから」、と考えているようです。確かに、長引く不況により保険料負担に耐えられなくなってきている人が増えているのも間違いないでしょう。また、賦課方式(年金給付財源を保険料収入に依存する方式)による国民年金は、基本的問題として少子高齢化に脆いという弱点があります。つまり、賦課方式には高齢化が進むほど受給世代を支えるために、現役世代の保険料負担が増加して行くという問題があるのです。従って、将来的には受給世代も現役世代も、ある程度の我慢を強いられる(受給世代の給付減、現役世代の保険料増)ことは避けられないと思います。
然し、それでも国民年金には国が運営するという他の民間保険会社にはない信用面の安心感があるほか、収益性でも、国民年金(老齢基礎年金)に勝る年金保険はないのです。
例えば、A社で65歳から年間80万円の年金(現在の老齢基礎年金に大よそ相当します。)を受給出来る様に年金設計すると、月々の保険料は約21,800 円となります。(国民年金の保険料は、13,300円です)。 また、B社で60歳から年間84万円の年金を受給出来る様に設計すると月々28,600円の保険料が必要となります。
この様な国民年金と民間保険との保険料負担額の相違は、

国民年金では年金給付に要する費用の3分の1が国庫負担となっていること(これを更に2分の1に引き上げることが予定されています)、
人件費等年金事業の事務の執行に要する費用も国庫の負担であることなどから生じます。
つまり、国民年金は国庫負担がある為、トータルで計算すると民間保険の6割ほどの保険料で年金設計されているということになります。資金の収益性でみれば、こんなに魅力的な金融商品は他にありません。来年度の財政再計算で給付と負担のバランスがどうなるのか、注意深く見ていかなければならないでしょうが、目安としては月々の保険料が20,000円を超えるか超えないか、で判断が分かれると思います(上記A社における事例の通りです)。月々20,000 円以下の保険料で、給付額も現状からそう減少しないということであれば間違いなく買いの商品だと、私は思います。
(2003年10月)