今年1月上旬、外資系の大手生命保険会社が同社の執行役員と交わした
契約条項(退職後2年以内に競合他社に就業するのを禁止し、違反した
場合は退職金を支給しない)の有効性が争われた訴訟の判決がありました。
この判決内容は非常にインパクトのあるものであり、新聞紙上等でも
大きく報道されました。
東京地裁は、次のように判断し、元執行役員男性の請求通りに、会
社に対して退職金(約3,000万)の支払いを命じました。
①「情報の流出を防ぐ目的で競合他社へ転職を禁じるのは過大」
②「職業選択の自由を不当に害している」
③「契約条項は公序良俗に反して無効」
原告側弁護士によれば、外資系企業では上記のような条項を交わす
ケースが多く、「名ばかり役員とされる執行役員の転職を安易に
禁じることに警鐘を鳴らす判断」としています。
一般的に、上記のような「競業他社への転職禁止」の契約は、
優秀な人材とノウハウの流出防止を目的に締結されます。
過去にも、競合他社への転職について争われた裁判例があります。
それらの判断のポイントは、次の通りとされています。
①競業他社への転職を希望する者の会社内での地位が高ければ高いほど、
転職が認められない(競業避止義務を負う)傾向にある。
②転職先の競業会社の内容・場所も考慮されており、それらが近ければ
近いほど転職が認められない(競業避止義務を負う)傾向にある。
競業他社への転職禁止に関する契約を従業員と締結する場合、上記を
考慮し慎重に対応する必要があるしょう。
(12年2月25日)