公益通報者保護法は、企業の不祥事が相次いで明らかになったことを
受け、法令違反行為を労働者が通報した場合に、解雇等の不利益な
取扱いから労働者を保護し、また、事業者のコンプライアンス経営を
強化することを目的として、平成18年4月に施行されました。
しかし、現在、この法律の実効性を疑問視する声が上がっています。
消費者庁が実施した調査でも労働者の6割強が同法を「知らない」
と答えるなど、課題は山積です。
同法では、保護の対象となる通報内容を特定の法律(会社法や
食品衛生法など433種類の法令)に違反した場合に限定しています。
しかし、専門家からは「法律家でも難しい法令違反の判断を、
一般の通報者に求めるのは無理がある」との指摘があります。
消費者庁が昨年10月に行った公益通報者保護制度に関する調査に
おいては、制度を導入している2,604事業者のうち、約44%が
過去1年間に通報件数がゼロだったと回答しています。
また、労働者(約3,000人)を対象とした調査では、約半数の人が
「会社の不法行為を知っても通報しない」などと答え、その理由を
「解雇や不利益な取扱いを受けるおそれがある」ためとしています。
一方、企業は、内部通報制度整備の重要性を認識し始めています。
内部通報窓口を設置する以外にも、外部の法律事務所等に相談窓口
を設けるなど、新たな対策を講じている企業も出てきました。
最近では、インターネットの掲示板に比べて匿名性が高い
「内部告発サイト」を通じた匿名の告発や暴露が増えています。
こうした動きは今後も増える可能性が高いとされており、
内部通報制度が有効に機能しなければ、重大な企業の情報が
ネット上に流れる危険性があることが企業を本制度導入に向けて
積極的にさせているようです。
(2011年3月)