厚生労働省では、定期健康診断で異常が見られた従業員の割合
(有所見率)が全国平均より高い事業所(従業員が50人以上で、
主な検査項目で全国平均より有所見率やその増加率が大きい事業所、
過去3年間で脳・心臓疾患で労災支給決定があった事業所など)に対し、
労働基準監督署が重点的に改善を指導するよう求める通知を3月下旬
に出しました。
定期健康診断全体の有所見率は、平成11年の「43%」から平成20年の
「51%」へと増加しています。
平成20年の有所見率については、脳・心臓疾患関係の検査項目の1つ
である血中脂質検査の「32%」が最も高く、脳・心臓疾患関係の主な
検査項目(血中脂質検査、血圧、血糖検査、尿検査、心電図検査)の
有所見率は概ね増加傾向にあります。
また、過重労働による脳・心臓疾患による労災支給決定件数は、
平成16年度の「294件」から平成20年度の「377件」へと増加しています。
過重労働による脳・心臓疾患を予防するためには、「時間外・休日労働
時間の削減」や「年次有給休暇の取得促進」等の働き方の見直しに
加えて、脂質異常症、高血圧等の脳・心臓疾患の発症と関係が深い
健康診断項目が有所見である労働者に対し、労働時間の短縮等の
就業上の措置を行うとともに、保健指導、健康教育等を通じて有所見項目
の改善を図り、脳・心臓疾患の発症リスクを引き下げる事も有効だと
言われています。
今回の通知では、事業者の具体的な取組内容として、「定期健診実施後
の措置」、「定期健診結果の労働者への確実な通知」、「有所見者に対する
医師等による食生活等の保健指導」、「有所見者を含む労働者に対して
栄養改善や運動等に取り組むように健康教育・健康相談の実施」などが
挙げられています。
一方、都道府県労働局等による具体的な周知啓発、要請等の方法としては、
「事業場に対する重点的な周知啓発、要請」や「事業主への自主点検の要請」
等があります。
労働安全衛生法では、健診で従業員に異常が見られた場合、医師からの
意見聴取や労働時間の短縮、医師による保健指導や健康教育などの義務を
事業者に課していますが、今回の指導内容は、これら義務の実施徹底や、
実施計画作成時に労働衛生コンサルタントの助言を受ける事などが中心
となるとされています。