改正労働基準法の施行を来月に控えていますが、法改正に
対応する積極的な動きは、大手企業においてもあまり
目立っていないようです。
業績不振に苦しむ企業にとっては、長時間労働の解消(時短)に
取り組む余裕がないのが現状なのかもしれません。
今回の改正の中心は、
(1)労使協定を締結すれば従業員が1時間単位で有給休暇を取得できる、
(2)月60時間以上の時間外労働に対する割増賃金率を現行の25%から
50%に引き上げる、という2点です(中小企業については当分の間、
法定割増賃金率の引上げについては猶予されます)。
現在、年次有給休暇は原則として1日単位でしか取得することが
できませんが、改正後は、労使協定があれば1時間単位で年間最大5日分
を取得することが可能となります。
しかし、「生産現場の要員配置やライン稼働に大きな影響が出る」といった
理由から、1時間単位の有給休暇制度の導入を見送る企業も少なくない
ようです。
この制度の導入には労使間の協議が必要ですが、労働者側からの導入の
要求自体が出ないケースもあります。
その一方で、時間外労働の割増賃金率の引上げへの対応については、
労務コスト削減のために時短を進めることが考えられますが、準備を
進めている大手企業はあまり多くはないという調査結果もあるようです。
日本では、時短は一般に進んでいるとは言い難く、厚生労働省の調査
によると、日本企業の時短は過去10年でほとんど改善していません。
1999年と比べ2008年の労働時間は大手・中小企業とも増加しており、
有給休暇取得率も下がっていますが、サービス関連企業では法改正を
契機に積極的に時短に取り組む傾向がみられます。
2015年までに上場企業に義務付けられるとみられる国際会計基準(IFRS)
では、企業は未消化の有給休暇に相当する費用を引当金として負債に
計上しなければならない見通しとなっています。
負債の増加を嫌う企業は多く、この制度導入が従業員に有給休暇の取得
を促す可能性があります。
有給休暇関連の引当金の負債計上に伴い、引当金に対応する費用の計上も
必要になります。一般的な事務職員の場合は、損益計算書の中で人件費として
計上される見通しとなっています。ただ、製造業に従事する労働者や技術者など
の場合、この費用は、実際に製品として売買の対象になるまでは棚卸資産として
一時的に計上され、製品として売りに出された場合、一般的に製造原価として
損益計算書に反映することになりそうです。