高年齢者雇用安定法の改正

 4月に改正高年齢者雇用安定法が施行され、65歳までの雇用継続措置の導入が求められます。65歳までの雇用を確保するために、定年年齢の引上げや継続雇用制度を導入するにあたり、人件費すなわち賃金制度の見直しは避けては通れない問題です。 多くの企業で賃金制度の運用が年功序列型になっているのが現実です。定年延長を導入するにあたり従来の制度を運用していけば、年齢とともに賃金が上がっていき人件費が増大、賃金と生産性が乖離してしまいます。年功序列型賃金の下で、定年延長する場合には、賃金と生産性のバランスを保つため賃金のカットが必要になってきます。この場合には一律賃金カットやベースダウン等の手法が採られるでしょう。  しかし極端な場合には、従業員のモラールダウンや労働条件の不利益変更の問題が発生することもあり、この手法の採用には慎重にならざるを得ません。 そこで、生産性と賃金のバランスを考慮に入れつつ、高齢者のモチベーションの維持向上を踏まえた次の方法が採られる場合が多いので、ご紹介します。 ①職務給や成果給への移行・・・60歳以降の賃金制度を、実際の担当職務や実際の仕事の成果に応じた賃金とする方法です。年齢給の要素を残しつつも職務給や成果給を併用する事も可能です。 ②定年延長する代わりに、60歳以前の賃金 を見直す・・・定年延長を踏まえて長期的に見て、50歳代あるいは生産性と賃金の分岐点から賃金上昇カーブを緩やかにすることなどを検討する方法です。 ③在職老齢年金、高年齢雇用継続給付などの公的給付を活用する・・・特別支給の老齢厚生年金の受給者が60歳以降も働いている場合は、給与の額に応じて年金が調整支給されます。これを「在職老齢年金」といいます。また60歳以降に支払われる賃金額が、60歳到達時に支払われていた賃金額の75%未満に減少した場合には、「高年齢雇用継続給付」が支給されます。これらの公的給付を活用する方法です。これらの公的給付を最大限に活用できるよう、60歳以降の賃金額を設定するのも一つの方法です。再雇用などの継続雇用制度を導入する場合の賃金制度の見直しは、一旦退職し、再度新たな雇用契約を結ぶことになりますので、実際の仕事での生産性と高齢者の賃金のバランスを保ちやすいです。 雇用形態や職務内容などを検討し、労働条件にあわせて賃金を決定することができます。また賃金形態も月給制のみならず、年俸制や日給制など実情にあわせて決めることができます。さらに公的給付も、より効果的に活用できます。労働者個々のニーズにもマッチしやすく、多くの企業で雇用継続制度が導入されています。 これらの手法を組み合わせることにより賃金制度を見直し、企業の実態に即した制度を導入することで、人件費の増大を抑えることが可能となります。もちろん人件費を抑える事だけに注目するのでなく、高齢に伴う身体的機能の低下などをフォローするために職場環境の改善を行ったり、人事管理を行うことで生産力が向上するよう工夫し、賃金水準を高く保てるようにすることが望ましいのはいうまでありません。 (06/03)