企業年金の持ち運び その2

(2)然し、この10月からの制度改正で、基金の他、確定給付企業年金にも持ち運びの道が開かれるようになりました。一時金相当分を転職先の基金や確定給付企業年金、401Kに移せるようになったのです。

 但し、基金や確定給付企業年金に資産を移す場合には、まだ一定の制約があります。つまり、転職先企業の企業年金制度が、転職者の年金資産を受け入れることを年金規約で定めていることが条件となるのです。その場合、受け入れ対象をグループ企業内に限定することも認められます。受け入れ側は、資産を受け入れた場合、「移転受け入れ分を含めてその後の運用等のリスクを負担する」ことになります。

 だから、この制度改正によっても転職に伴う年金資産の自由な移転は、実際上、「グループ内企業同士の間に留まるのではないか」との見方もあります。厚生労働省では、各企業に資産移転のための規約変更を来年9月までに行うよう求めています。

 更に、転職先に資産を移せない場合の受け皿として、同じく10月には、従来の厚生年金基金連合会が衣替えし、企業年金連合会が発足しました。この連合会は、基金の中途脱退者を対象に、年金資産を受け入れて老後に年金を支給する事業も行ってきましたが、10月以降はその対象を確定給付企業年金にも広げたのです。連合会では、資産に対して年0.5%の利回りを保証し、運用実績がこれを上回れば、5年ごとに配当金を出すとのことです。連合会に資産を移して転職した場合には、その後の転職先企業年金が資産の受け入れを認めていればその資金を連合会から移転することも可能となります。

 連合会の年金給付は原則として65歳から終身で支払うことになりますが、移転された資産の範囲内での給付となるので、移転する資産がわずかだと、支給される年金額も小額となってしまいます。一方、企業側には転職者に対する説明が義務付けられるようになりました。つまり、「送り出す側の会社は年金資産の金額や選択肢の内容などを、受け入れ側は将来の年金見込額などを説明しなければならいない」という訳です。

 公的年金の給付が引き下げられるなか、企業年金の重要性は益々高まってきています。 これからは、有能な社員を確保していくためには「魅力のある企業年金完備」が必要な時代になっていくことでしょう。

 10月21日付の日経新聞報道によれば、「セコム」がこの法改正を受け、中途入社社員に対する「ポータビリティ制度」を導入するとのことです。今後、優秀な即戦力社員を確保するため、益々この企業年金通算制度の導入に踏切る企業が増加していくことも考えられます。
(05/10)