厚生労働省は高齢者の医療制度改革として、2008年度から75歳以上のすべての人が保険料を払う新たな高齢者医療保険制度の創設をめざしています。その一環として、現在は健康保険料を負担していない65歳から74歳までの会社員の扶養家族からも保険料を徴収する案を検討しています。同省は受益と負担の公平を保ち、医療費を賄っていくには高齢者の応分の負担が不可欠と判断しているようです。
①現在の高齢者医療制度
現在は会社員が入る健康保険組合・政府管掌健康保険の保険料は会社員本人だけにかかっています。扶養家族は保険料を支払わず、医療にかかる給付の負担は保険料を納める会社員が分担する仕組みとなっています。一方、国民健康保険には扶養家族というシステムがないため、自営業者などは夫婦別々に保険料を支払わなければなりません。会社を退職し、扶養してくれる家族がいない場合も同様です。
②政府の見直し案 2007年度の推計では65歳から74歳までの「前期高齢者」は、国民健康保険の加入者が約1,100万人、被用者保険加入者で保険料を負担する人が約130万人で、現在保険料の負担がない扶養家族が約170万人となる見込みです。
政府が新たに徴収対象としているのは、前期高齢者のうちの扶養家族についてです。扶養家族を持つ会社員の保険料に上乗せして徴収する案が有力で、64歳以下の扶養家族については、子育て世帯などに配慮し今まで通り保険料の負担を求めません。
扶養家族の中でも前期高齢者は年金収入があるため、平均所得が年100万円弱と64歳以下の約4倍あり、一人当たりの医療費給付は全体平均の4倍近くあります。また、75歳以上の「後期高齢者」が入る新しい保険制度をつくり、保険料を徴収することなどから現在は保険料を負担していない「前期高齢者」の扶養家族からも保険料を徴収する考えのようです。厚生労働省は、年末までにまとめる政府・与党案に前期高齢者の負担見直しも盛る考えで、来年の通常国会への関連法案提出をめざしているようです。
(05/08)