財務省は、04年度の年金改革で、物価下落分に加え、消費の減少分も年金給付の引き下げに反映するという原則(現在は凍結)を持ち出し、支給中の年金額を一律4%削減することを厚生労働省などに求める方針を明らかにしました。しかし、厚生労働省はすでに年金を受け取り始めた人の受給額を減らすことは、高齢者の反発を招き、選挙を控えた与党の合意は得にくいとして実現困難との見解を明らかにしています。更に、坂口厚生労働相は、年金・医療・介護の3制度を合わせた社会保険料負担の上限を設ける一方、その負担で保障する給付の水準を示す考えを表明し、今8月末にも大臣案として総理に提出する方針を明らかにしています。負担については、厚生年金の保険料率上限を20%と設定することをはじめ、医療・介護保険料率に関しても今後の給付の伸びなどを考慮して具体的な数値を示す方針です。給付水準については「最低でも現役世代の所得の50%を下限にする」とし、50%台確保の考えを改めて示し、社会保障費の大幅削減(40%程度に抑えることを主張)を唱えている財務省に反論しています。
一方、昨今問題化している国民年金の1号被保険者の保険料未納問題について社会保険庁は、所得や財産があるにも拘わらず、国民年金保険料を納めない悪質な未納者約1万人をリストアップして強制徴収に乗り出す方針を固めました。9月にも全国の社会保険事務局にリスト作成を指示。最終的な督促にも応じない場合は、財産差し押さえの手続きに入るとのことです。何れにしても、公的年金の給付と負担の問題は、世代間の不公平感の増大化と合わせ、今後益々議論が白熱していくものと思われます。
(2003年9月)