日本版401Kの実態

確定拠出年金はご存知のように、企業型では企業が掛金を従業員別に
拠出して積み立てて行き、従業員が60歳以降の退職時に給付を受ける
制度です。

然し、その実態は、退職時に支給される退職金ではなく、老齢年金です。
なぜなら、死亡・障害の場合を除いては、従業員は自分の口座に幾らお金が
貯まっていようとも60歳になるまで1円も引き出せないからです。

元々「確定拠出年金は公的年金を補完する」という位置づけをされて発足した
経緯もあり、そのために、今、日本で一番有利な資産運用という
優遇を受けています。

然し、退職は“常に60歳を迎えての定年ばかり”ではありません。
むしろ中小・中堅企業においては中途退職の方が多く、定年退職の
ほうが一般的には少ないのではないでしょうか。
また、その退職も、円満退職ばかりではないでしょう。

経営者と従業員との間のトラブルにより、退職に至る場合も少なくは
ありません。

そのような場合の相互の感情のもつれも最終的にはお金で解決できる
かもしれません。
つまり、退職金にはこのようなトラブルを解決するための「手切れ金」
という意味合いも中小企業では割に多く見られる事例ではないでしょうか。

更に、退職する従業員には“退職金を、事業を起こす資金にしたい”という
欲求もあるでしょう。

このように、経営者は、“当社は、100%確定拠出年金に加入しているから
キャッシュの支払いはないよ”と従業員に云っているだけでは済まない事態
が想定されます。

このように考えると「確定拠出年金への100%の加入」は実態的には余り
お勧めできないシステムであるかもしれません。

退職給付の制度間の割合の慎重な検討が必要です。

ただし、このように云うからといってなにも確定拠出年金を批判している
わけではありません。

逆に、この制度自体は非常に優れた制度であると思っています。
公的年金も今後は、更に減額していくことが予想されます。

だから、今の時代は国が或いは会社が何とかしてくれるという
「寄らば大樹の陰」の時代ではなく、
むしろ「長生きのリスク」を従業員個人個人がしっかりとわきまえて
ライフプランニングをし、自ら自立を計っていく時代であることは明確です。

従って、確定拠出年金は、会社の経営方針や社員構成等によれば、
社員の強力なインセンティブを期待できるツールになる可能性も
十分にあるでしょう。

ところで、確定拠出年金も導入で忘れてならないのが、「投資教育」です。
法文上では任意規定に過ぎない投資教育が、義務規定に変わったのかと
思うほど厚生労働省は投資教育に力を入れています。

そして、この分野にビジネスとしての熱い視線を送っている会社や人達
がいます。
当然のことながら無料のサービスではありません。

確定拠出年金の制度設計は、格安で応じて投資教育で儲けるという方針
の金融機関もあるようです。

退職給付制度の導入コンサルは、このような諸点も良く研究して、
くれぐれも依頼先をお間違えのないようにして下さい。
(2007年2月)