コンテンツへスキップ
- 当社の社員が会社の重要情報を他社へ漏らしてしまい、処分決定まで自宅謹慎するように命じました。そして1週間の謹慎後、減給処分とし、会社は「謹慎中は無給」としました。就業規則には謹慎に関する規定は特になく、社員は納得できない様子ですが、法的に問題があるのでしょうか?
- 社員の行為が就業規則で定めた懲戒事由に該当する場合、会社は 処分内容を決定します。 処分決定をする前の段階として「自宅謹慎」や「自宅待機」を 命じることがありますが、就業規則にこれらの扱いに関する規定が ない場合、そのような謹慎・待機命令を下せるのかという問題が 生じます。 大企業に比べ中小企業では、就業規則に謹慎に関する扱いを明記 していないところが多いかもしれません。 結論から言うと、そのような規定がなくても、処分決定前の 自宅謹慎を命じることは、会社の指揮命令権の一環である業務命令 として可能です。会社の業務命令として自宅謹慎を命じた場合、 社員が「働きたい」と言っても会社はこれを拒否することができます。 会社には社員の行為が懲戒事由に当たるのか調査する必要があり、 職場秩序を維持するためであれば当該社員に自宅謹慎を命じることも やむを得ないと認められるためです。 処分決定前に自宅謹慎を命じる場合の扱いをめぐる裁判には、 「懲戒処分ではなくても、会社側に職場秩序維持の理由などがある 場合」に謹慎を命じることができるとしたものの、このような場合の 自宅謹慎は当面の職場秩序維持の観点からとられる一種の職務命令で あることから、使用者には謹慎期間中の賃金の支払義務があると判断 したものがあります(日通名古屋製鉄作業事件・平成3年7月名古屋 地裁判決)。 他方、謹慎命令が、懲戒規定に基づいた「処分」として出されたもの ならば、謹慎期間中は無給でもよいとされています。例えば、調査の ために1週間休むように命じた後、懲戒処分として再び1週間休むように 命じた場合、後者の期間は無給となります。 しかし、処分対象の社員に会社内で強い権限があれば、安易に証拠を もみ消すことができるおそれもあります。 前述の名古屋地裁判決は、このような場合には「不正行為の再発、 証拠隠滅のおそれなどの緊急かつ合理的な理由」があるとして、 例外的に処分決定前の謹慎でも無給にできると判断しています。 ただし、この要件は厳格で、該当するケースはかなり限られるので、 注意が必要です。 これらの事態に備えるために就業規則で休業命令及びその間の 休業手当などの規定を明確にしておくことをお勧めします。
(11年11月29日)