- 弊社は結構「持ち帰り残業」をしている社員が多い様なのですが、「持ち帰り残業」は長時間労働なので、労災認定をされることがあると聞きましたが、本当なのでしょうか?
- 2011年に英会話学校講師の女性が自殺したのは、自宅で
長時間労働を行った「持ち帰り残業」が原因であったとして、
金沢労働基準監督署が労災認定しました。
持ち帰り残業については自宅での作業実態の把握が困難
なため、労災認定されたのは異例のことです。
ただ、本件では、メールや関係者の話から、女性は英単語
を説明するイラストを描いた「単語カード」を業務命令により
2,000枚以上自宅で作成しており、監督署は、実際に単語
カードを作成して時間を計測し、自宅で月80時間程度の
残業をしていたと結論付けました。これにより、会社での
残業時間と合わせると恒常的に月100時間程度の時間外
労働があり、さらに上司からの叱咤による心理的負担に
よりうつ病を発症したとして、労災を認定したというものです。
原則、会社が承認していない持ち帰り残業は労働時間には
含まれません。
労働者が自己の判断で仕事を持ち帰って自宅で残業して
いる場合、会社はその実態を把握できないため、持ち帰り
残業は基本的に会社の指揮命令下にないものとして労働
時間であるとは判断しないのです。
ただ、持ち帰り残業が上司の明確な指示に基づいて
行われている場合は、それに要した時間は、当然に労働
時間に含まれることになります。
また、通常の労働時間では処理できないような業務量を
指示していたり、持ち帰り残業を黙認したりしていた場合
などは、事実上の指揮命令があったとして労働時間と
判断される可能性があることに留意する必要があります。
持ち帰り残業は、労災認定される可能性や残業代を請求
される可能性は勿論ですが、情報漏えいの危険性も
あります。企業としては、「持ち帰り残業を原則禁止する」、
「どうしても必要な場合は本人に事前申請させる」、
「情報漏えい対策を講じる」などのルール作りが必要と
なるでしょう。(2014年12月30日)