- 当社の社員が、突然、一方的に辞めると辞表を郵送して来た上「給与は銀行口座に振り込んでくれ」と連絡して来ました。こんなひどい辞め方をした社員にも給与を振り込まなければいけないのでしょうか?
- 経営者の腹立たしさは,よく理解できます。
しかしながら,賃金は労働の対価ですから,実際に働いた
事実があるならば,その分の給与は支払う必要があります。
勿論,突然、一方的に退職したことにより会社が損害を被った
のであれば,その損害について賠償請求することも
可能でしょうが,だからといって会社側が一方的にその分を
給与と相殺することはできません。
また,損害賠償請求を起こすのも,よほどの事情がない限り
現実的とは言えません。
では,上記のような場合に,会社はどのような対応を
すればよいのでしょうか。
上記の通り給与を支払わないということはできませんが,
給与を現金で直接手渡しとすることは可能かと考えられます。
なぜなら,労働基準法は,「賃金は,通貨で,直接労働者に,
その全額を支払わなければならない」と直接手渡しを原則
としているからです。
但し実務上では,賃金を直接現金で支給している会社の
方が珍しく,多くの会社においては社員各人が開設して
いる金融機関の口座に振り込む形で支払っています。
これについては,労働基準法施行規則で社員本人の
同意を得た場合は,銀行口座への振込みも違法ではない
とされているからです。
従って、法律上は給与の支払いは直接手渡しが原則
であり、銀行振込みは例外的な取扱いですので,
社員がいきなり出社しなくなったような場合は,原則の
手渡しに戻すことは就業規則に明示しておくことにより、
可能です。
そして,実際に受取りに来た際にその場で小言の一言
でも言うことができれば,経営者の気持ちが収まること
もあるでしょう。また,このようなケースでは,貸与した
備品等の返却がされないまま退職しているケースも
多いですから,それらの備品等を回収することも
出来るでしょう。
本件の参考規定例をご希望の場合は、弊事務所に
お問い合わせ下さい。(2015年1月26日)