「リスク分担型確定給付企業年金」とは?

最近、新聞等に 「リスク分担型確定給付企業年金」という言葉が並ぶようになりましたが、いったいどういう制度なのですか?
先般、厚生労働省企業年金部会で新たな企業年金制度 (リスク分担型確定給付企業年金)の案が示され、了承 されました。 同制度は一定額の掛金を予め上乗せしておくことで景気 悪化時の追加拠出が避けられるというものです。 パブリックコメントの実施を経て7月にも関連する政省令を 改正し、早ければ8月にも企業が導入できるように なりそうです。 この「リスク分担型確定給付企業年金」は、以前から 「ハイブリッド型年金制度」「混合型年金制度」などと 言われていたものです。 予め給付額を決めておき会社が拠出・運用・管理・給付 までの責任を負う「確定給付年金(DB)」と、 拠出した掛金額とその運用収益によって給付額が決定され 自己の責任において管理する「確定拠出年金(DC)」の 両方の性質を併せ持つ年金制度となります。  新しい企業年金制度は、企業が景気変動などの 「将来的に発生するリスク」に備えて、労使の合意 により定めた掛金(リスク対応掛金)を予め多めに 拠出しておくことで、財政が悪化した場合に起きる 積立不足について追加拠出が避けられるという システムです。 同制度は、当初の予測よりも財政が更に悪化して 積立不足が拡大した場合には給付減額により加入者 および受給者にとって負担となりますが、逆にリスク 対応掛金として多めに拠出した分については、運用 が好調な場合は給付が増えるというメリットもあります。  厚生労働省では、新制度により企業の導入が 進むことを期待するほか、DBからの移行を想定 しているようです。DBでは運用リスクが企業に偏る 一方で、DCでは個人に偏ってしまうこととなります。 これらを解決するため、労使でリスクを柔軟に分け 合う制度として提案されたのが同制度ですが、同制度は DCと同じく、運用の結果次第で加入者および受給者の 給付が調整される可能性のある仕組みです。 このため、制度開始時の意思決定に加え、制度実施後も 加入者が適切に意思決定に参画できるための仕組みが 必要と言えます
(2016年6月4日)