コンテンツへスキップ
- 欠勤が多い社員に対して、給与・賞与は,賃金規程に従って欠勤日数分の支給額を減額していましたが、その社員が退職する場合も、欠勤日数に応じて退職金を減額しても(尚、退職金規程には「欠勤日数に応じた退職金の減額規定」は設けていません)問題はないのでしょうか?
- 「退職金制度」は、法律上設けることを義務付けられていません ので,仮に「退職金制度」がなくても問題になることはありません。 但し、就業規則などによって,退職金の支給条件などが明確 に定められている場合には,退職金は単なる恩恵的な給付 ではなく,労働基準法上の賃金に該当することになります。 本ケースでも退職金規程に従って退職金を支給しているとの ことですので,退職金は労基法上の賃金に該当することに なります。 「退職金制度」については,労働基準法(89条3号の2)により、 「退職手当の定めをする場合においては,適用される労働者 の範囲,退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職 手当の支払の時期に関する事項」を就業規則に記載 しなければならないとされています。 そして,退職金の不支給または減額事由を設ける場合, これは上記の「退職手当の決定,計算及び支払の方法」 に関する事項に該当しますので,就業規則に記載 しなければなりません(昭63.1.1基発第1号,平11.3.31 基発第168号)。 従って,退職金規程の支給条件を満たす者に対して 退職金を支給しなかったり,減額規定がないにも拘らず 退職金額を減額して支給したりすることは,賃金の支払い について定めた同法24条違反となります。 但し、退職金規程に不支給・減額条項を定めることは 可能ですか,不支給・減額条項があるからといって, 必ずしも退職金の不支給・減額が認められるわけでは ありません。 裁判例では, ①「退職金の全額を失わせるに足りる懲戒解雇の事由とは, 労働者に永年の勤続の功を抹消してしまうほどの不信が あったことを要し,労基法第20条但書の即時解雇の事由 より更に厳格に解すべきである」(橋元運輸事件,47.4.28 名古屋地判), ②「退職金の全額を失わせるような懲戒解雇事由とは, 労働者の過去の労働に対する評価を全て抹消してしまう 程の著しい不信行為があった場合でなければならない」 (トヨタ工業事件,平6.6.28東京地判)、などとされている からです。 なお,退職金の減額については,一部は退職金が 支給されることから,全額不支給の場合ほどの事由は 求められず,その行為の程度と減額の程度から判断 されることになります。 いずれにせよ,退職金規程に減額規定がない場合は, 退職金を減額して支払うことはできません。 尚,退職金の計算方法は労使間で自由に決定すること ができますから,例えば,退職金規程の定めにおいて, 在職中の出勤率などによって退職金額の支給率などに 差を設けることは問題ありません。 ご不明な点等あれば、弊社にお尋ね下さい。
(2016年6月27日)