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- 当社では,コンピュータシステムの保守要員については,退社後も,顧客からの緊急出動の要請や質問等に応ずるため,会社が貸与している携帯電話に応答することを義務付けております。この場合、携帯電話に応答している時間については賃金を支払っていますが、応答している時間以外の時間については支払っていません。なお,退社後には当該保守要員が自宅に居ることまでは義務付けておりません。 この様な当社の対応に法的な問題はないでしょうか?
- 退社後も携帯電話に応答することが義 務付けられて いる場合は,その応答している時間は使用者の指揮 命令下に置か れている労働時間とみなされ,賃金の 支払義務があります。また,実際に応答していない 時間は,拘束の程度が強くない場合は労働時間と することはできませんが,現実に応答の頻度が高く 退社後も相当程度の時間応対しているという場合, 退社後の時間も含めて労働時間とされる可能性が あります。 退社後に貸与・携帯電話に応答する義務が課され ていれば,例えば,オフィスで顧客が来訪してきた 場合に対応しなければならない時間(手待ち時間) と同様に,常時使用者の指揮命令下に置かれて いる状態にあるので、応答している時間以外の時間 についても賃金を支払う義務があるとの結論に なりそうです。 しかし,本件は自宅での待機までは求めていません。 要は携帯電話で連絡がとることができればよく、 退社後は食事をしようが本を読もうが自由である ようです。そうすると,システムの保守要員に対する 拘束の程度はあまり強くないと考えられ,それらの 時間を「労働させた」即ち、労働時間と評価すること はできないでしょう。ただし,現実に 応答の頻度が 高く,退社後も相当程度の時間応対しているという 状況に至れば,退社後の時間も含めて労働時間と される可能性はあります。 判例では,仮眠時間の労働時間制が問題となった 大星ビル管理事件(最一小判平14.2.28)で、 「本件仮眠時間中,労働契約に基づく義務として, 仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに 相当の対応をすることを義務付けられているのであり, 実作業への従事がその必要が生じた場合に限られる としても,その必要が生じることが皆無に等しいなど 実質的に上記のような義務付けがされていないと 認めることができるような事情も存しないから, 本件仮眠時間は全体として労働からの解放が保障 されている とはいえず,労働契約上の役務の提供が 義務付けられていると評価することができる。 従って,上告人らは,本件仮眠時間中は不活動 仮眠時間も含めて被上告人の指揮命令下に 置かれているものであり,本件仮眠時間は労基法上 の労働時間に当たるというベきである」とされています。
(2016年9月27日)