「亀の甲より年の功」

  この間、街を歩いているとき、十数年振りの

旧友に出会いました。

久しく会わなかった人の第一印象は、一瞬、

「老けたなあ」でした(これは勿論お互い様

なのですが)。

「老けたなあ」と直感したのは、何より見事な

頭のはげ具合でした。

  向こうから[やぁ、久しぶり]と声をかけられた

のですが、一瞬「誰だか分りませんでした」。

私の頭の中には、立派な黒髪の「○○○君」

だったからです。

とはいいながら、会った途端にしげしげと見るわけ

にもいかないので、その数秒間は視線のやり場に

困ったのでした。

視線を泳がしながら、取り敢えずは今日的な

話題でごまかし、うまい具合に取り繕いました。

こんなときは、間違えてもしげしげとスッカリ

変わってしまった相手の姿に見入らないことです。

 「亀の甲より年の功」で、何とか無事に旧交を

温め、「じゃあ、その内に一杯やろう」と何時に

なるか分らない挨拶言葉で分かれることが

できました。