労務行政研究所の調査によれば、1,000人未満規模の企業では15.0%が退職一時金制度を廃止しています。この場合は、「就業規則(退職金規程)」の変更を伴う事になりますが、裁判所は「退職金規程」の変更は、”労働者に不利益な労働条件を一方的に課する就業規則の作成又は変更の可否に関する判例法理”に基づいて判断すべきであるとしています。就業規則の不利益変更に関する最高裁の法理とは次のものをいいます。
既に具体的権利として発生している退職金請求権といったもの(既得権)は、原則として労働者の合意なくしては就業規則の変更によって処分あるいは変更することはできない。
変更された就業規則の条項が合理的である場合には、その後の労働条件については変更に同意しない労働者にも拘束力がある。
上記の「合理性の判断」は総合的に行う。
従業員の大多数を代表する者(組合)の同意があれば一応、合理的と推認する。退職企業年金規程の不利益変更に関する判例では、「名古屋学院事件」が参考になります。「名古屋学院事件」は、学校法人の経営状況の悪化により、過去の掛金部分に相当する年金は一時金として支払うことなどを条件として、年金制度の廃止が有効とされた事案です。名古屋学院の経営状態の悪化は、経常会計において消費支出超過状態が続いていたということが決め手となりました。
このように、退職金制度の事業主による一方的な廃止、変更等は法的責任を追求されることもあり得ますので、制度変更等をお考えの際は、専門家に相談されることをお薦めします。
(2004年6月)