厚生年金基金は本年8月1日現在で1,111基金あり、その加入者総数は推計730万人ですが、その基金の解散数は、2003年度は92件と2000年度の3倍に急増しています。その上、基金の解散要件が2005年4月から緩和されるので、今後更に解散する基金が増加しそうです。現状、厚生年金基金が解散する場合は、代行(厚生年金の一部を国に代わって行なう)部分の原資を、厚生年金基金連合会に一括して納めなければなりません。
従って、その基金に積立て不足があると、その分の資金を手当てする必要があるのです。然し、来年4月以降は、資金の持ち合せがなくても、原則5年以内に不足分を分割払いすることを約束すれば、解散が認められるようになります。また、基金が解散するには、設立母体の企業のほか、加入者の4分の3以上の同意、加入者の3分の1以上が参加する労働組合の同意を得る必要があります。然し、年金受給者に対しては、解散理由を事前に説明するだけで良いとされており、その権利は十分に保護されていません。
ところで、「加算型厚生年金基金」は、上記の代行部分と、基金独自の上乗せ部分からなります。代行部分は、基金が解散しても、厚生年金基金連合会が引き継ぐので影響はありませんが、上乗せ部分は、基金が解散する場合(その多くは財政が破綻状態のため)、給付も減額となることが多くあります。母体企業が健全であれば、企業に給付義務のある退職金部分については、その補填も可能でしょう。然し基金が解散に追い込まれるときは、多くの場合で母体企業の経営も厳しく、補填が困難なケースも少なくありません。この様に今後は一段と、基金の解散により老後生活の見直しを迫られる人たちが増えて行くことが懸念されます。