厚生労働省は、ホワイトカラー社員の一部にも時間外労働などの割増賃金の支払いの除外対象を拡大する方針を固めました。週40時間制や法定休日制などの労働時間規制に関する労働基準法の見直しを進め、2007年の国会に改正案を提出する意向です。
労働基準監督署が2003年に行った未払い残業代の是正指導は約1万8,500件で、過去30年間で最悪でした。景気後退局面での過重労働も否めませんが、時間重視の規制と職場の実態のずれも是正指導急増の原因でしょう。工場のライン生産などが主流だった頃の労働時間規制が、サービス業中心の多様な働き方が定着した現代に適合しなくなってきており、労働生産性を高め企業の国際競争力を維持する為にも、労働時間規制の抜本的な改正が必要だとされています。
現行の労働時間規制が適用されないのは、部長など部下の労働条件を決める管理職だけです。また、実労働時間と関係なく一定時間働いたとみなす裁量労働制は、手続きが煩雑な為導入が進んでいません。ホワイトカラーに対する年俸制も、割増賃金に対する規制が残る為、真の年俸制にはなり得ません。
時間で成果を測りやすい工場勤務のブルーカラー職種には規制を残し、本人の裁量が大きいホワイトカラー職種では規制を緩和するという方針転換は、過重労働を警戒する労働組合からの反発も予想され、規制除外対象をどう定義付けるかという今後の課題も残しています。従って、簡単には立法化が進むとも思われませんが、このような法改正の動きがあるという事は、日本の従来の労働時間を最重視した労働政策が、今大きく転換されようとしている事を現していると云えるでしょう。(05/05)