賞与の支給について、1~6月を算定対象期間として7月末に支給するようなケースで、賞与の支給算定対象期間のすべてに勤務していた社員が支給日より前に退職する場合に賞与を不支給としても、問題はないのでしょうか。
企業で良く起こるこの問題については、次のように、考えられています。
①賞与不支給が可能な場合
次の(イ)、(ロ)のいずれかに該当する場合には賞与を支給しないことが可能といえます。
(イ)賞与支給日に在籍していることを賞与の支給条件としており、就業規則、労働協約、労働契約に定めている、 あるいはそのような労使慣行がある場合
(ロ)退職日までに賞与の支給額や算定方法が決定していない場合
②支給日在籍要件とは
上記は、(イ)は「支給日在籍要件」と呼ばれるもので、賞与の受給権の取得につき当該支給日に在籍することを要件とする慣行は、”その内容において不合理なものということはできず、従業員がその存在を認識してこれに従う意思を有していたかどうかに拘らず、事実たる慣習として社員に対しても効力を有するものというべきものである”、といった裁判例があります。したがって、(イ)のような場合には算定対象期間の全部または一部勤務した社員であっても、賞与の支給日より前に退職する者には賞与を支給しないことが認められると考えられます。但し、例年より支給日が遅れたために、例年の支給日には在籍していたが実際の支給日前に退職した者には、「支給日在籍要件」は適用されません。
③支給日在籍要件がない場合
では、「支給日在籍要件」がない場合はどうなるのでしょうか。この場合には、上記(ロ)に該当するか否かが問題となります。賞与の請求権について、査定などを経て、使用者が具体的な支給額またはその計算方法が決定した時点、あるいはこの点について労使の合意が成立した時点以降から生ずる、とする考え方が有力だからです。この解釈によると、支給額またはその計算方法が決定される日までの間は、社員には賞与の請求権がないことになりますので、たとえ、賞与の算定対象期間の全部に勤務していても、決定日前に退職する者には賞与を支給しないという取扱いが可能となります。
(06/05)