若手への技術継承が遅れる中小企業の実態

先日、東京商工会議所より「中小企業における人材の充足状況および技術・ノウハウ継承への対応状況に関する調査結果」が発表されました。これは、中小企業における人材の充足状況および技術・ノウハウ継承への対応状況について把握するために、東京商工会議所会員の中小企業(資本金3億円以下)476 社を対象に行われたものです。それによると、人材の充足状況および技術・ノウハウ等の若手への継承状況は、次の通りとのことです。
①人材の充足状況
 全業種では、48.5%の企業が「適正である」と回答している一方で、不足感を示した企業も47.3%(「不足している」21.9%と「やや不足している」25.4%の合計)に達しています。これに対し、余剰感を示した企業は4.2%に留まっており、中小企業の人材不足感の高まりが鮮明になっています。これに対する人 材を確保するための新規雇用予定については、全業種では58.3%の企業が「雇用する」と回答しており、積極的に新規雇用を行っていこうとする中小企業の状況が浮き彫りとなりました。
②技術・ノウハウ等の団塊の世代への依存度
 2007年問題に関連した技術・ノウハウ等の団塊の世代への依存度の調査項目については、団塊の世代という限定された年代層に対して、41.1%(「大きく依存」16.0%、「まあまあ依存」25.1%の合計)の企業が技術・ノウハウ等を依存していると回答しています。業種別で見ると、建設業が56.5%、製造業が49.5%と高い依存度を示していることが分かります。その対策としての技術・ノウハウ等の若手従業員への継承状況については、76.0%の企業が技術・ノウハウ等の継承が「思い通りに進んでいない」と回答しています。
 このように、人材の不足感に加え、技術やノウハウの若手への伝承が遅れているという結果となり、中小企業の今後の事業運営への影響が懸念されます。ここ数年、社員教育に力を入れる企業が増えていますが、やはり既存の人材のメンテナンスを行い、 その雇用の安定とノウハウの伝承による安定した事業活動の実現を意識的に行わなければならない時代となってきていると思われます。
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