近年、「パワー・ハラスメント」(パワハラ)に対する社会的関心が高まっていますが、法的な定義がなく、また、その防止を直接義務付ける法律もないのが現状です。 したがって、パワハラに該当する行為の範囲は、各企業が自社の防止規程などに具体的に盛り込んでおく事が必要であり、併せて防止措置を定める事が重要でしょう。 では、具体的にどのような措置を講ずればよいのでしょうか。
「セクシュアル・ハラスメント」(セクハラ)については、男女雇用機会均等法21条により、事業主にその防止のための配慮が義務付けられ、企業がどのような措置を講ずべきかについても指針で明示されています。
そこで、パワハラについては、セクハラについて法制化されている内容を参考に、定義付けや防止措置を決定するのがよいと考えられます。また、就業規則や労働協約に、禁止行為や防止措置の内容を規定しておく事で、実効性の高いものとする事ができます。法的な定義はありませんが、パワハラとは、「職場において、地位や人間関係で弱い立場のものに対して、精神的または身体的な苦痛(いじめや嫌がらせ)を与える事」と定義されたりします。一般的には、上司から部下へといった図式が思い浮かぶかと思いますが、同僚間など、社内での地位が対等な者の間で行われるものや、社内での地位が下位の者から上位の者へ行われるハラスメントについても、防止措置の対象としておくべきです。防止措置は、前述のようにセクハラの防止措置に倣って、以下の通りとするのがよいでしょう。
①パワハラ防止規程の作成や社内研修の実施などにより、パワハラを禁止する事を周知する。
②パワハラに関する相談・苦情の受付窓口を設置する。
③パワハラが生じた場合に備えて制裁規定など、事後対応のための体制を整備する。
なお、実際にパワハラが発生した場合は、総務部・人事部などの担当部署が事実関係を調査し、事実が確認された場合は、被害の拡大を防ぐため配置転換などの雇用管理上の措置を講じたり、制裁規定に基づき行為者を処分したりするなどの対応を速やかに行う事が必要になると思われます。
(06/09)