日本経済の復調から、最近は労働需給が引締まり、中小企業では「求人難」が
深刻化しているようです。
そうした中で当社は、主に中小企業の顧客と日々接している訳ですが、
その中には、「社員の回転は速いほうが良い」という考え方をお持ちの経営者
もいらっしゃり、考えさせられることがあります。
確かに株式公開を目指すような著しい成長を遂げている企業においては、
そのスピードに付いていくことができる人材の選抜が、ある程度必要な場合
があります。
また医療機関であれば、古い医療知識で対応されるより、大病院で最新の
医療知識や技術を身につけてきた人材を確保することが、患者満足度向上に
繋がることもあり、ある程度の人材の回転も必要とされる場合が見られるかも
知れません。
然し、こうした事例はあくまでも例外であり、技能伝承や地域密着経営など
を考えれば、通常は過度の人材の回転が経営にとってプラスに働くという
ことは余りないのではないでしょうか。
社員が退職すること、つまり「人材の流出」は、企業経営において実に大きな
損失をもたらすことになります。
欠員を埋めるための人材募集経費や名刺などの備品経費など直接的な
経費増だけではなく、間接的な経費の増加や業務の停滞といったマイナス
にも注目しなければなりません。
例えば、退職者からの業務引継や後任人材確保のための採用活動、
その後の教育指導時間などの負担は、本来行うべき業務の停滞に繋がり、
企業活動にとっては大きなマイナスとなります。
このように中小企業において「人材の流出」は、正常な企業運営を阻害し、
企業の成長を停滞させる要因であると考えるべきではないでしょうか。
更に言えば、社員の退職を適正水準まで抑制することは、企業にとって
間接的に利益をもたらすものであると考えることもできるはずです。
今後、日本の労働力人口は、団塊の世代の大量退職や少子化の影響
により減少し、人材の確保はこれまで以上に困難になることは明白です。
こうした労働力減少時代には、良質な人材を安定的に確保・育成することが
何よりも重要であり、そのためには、早期に自社の風土や働く社員の
モチベーション管理などを本格的に見直していかなければなりません。
人材確保難により、事業を縮小せざるを得なくなるという最悪のシナリオ
だけは、回避したいものです。