企業による新卒者の内定取消しが大きな社会問題となっています。
厚生労働省の調査によれば、来春に高校や大学を卒業する学生の
採用内定取消件数は、12月下旬時点で172事業所769人となっています。
この数字は、11月の第1回調査時点(331人)と比較して急拡大しており、
大手証券会社の破綻による影響が出た1998年(1,077人)を上回る
ハイペースです。
産業別では、不動産が197人と最多で、製造業が187人で続いています。
また、文部科学省は、内定取消し問題で大学関係者らを集めて12月中旬に
緊急対策会議を開きましたが、大学側の調査により、国立大だけで47人の
内定取消しがあったことがわかっています。
また、日本高等学校教職員組合の緊急調査では、採用内定を取り消された
高校生が全国で73人(12月19日現在)にのぼっているそうです。
大日本印刷事件(最高裁昭和54年7月20日判決)では、内定取消しが
認められる場合について、「内定当時知ることができず、また知ることを
期待できないような事実があり、それを理由に内定を取り消すことが
解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上
相当として是認できる場合」に限られるとしています。
しかし、企業との結びつきの強弱の観点から、内定取消しは、社会通念上
相当な事情があれば、正式採用後の解雇に比べると合理性や相当性が
緩やかに認められるのも事実です。
厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会職業安定分科会は、
1月上旬に、厚生労働省が示していた新卒者の内定取消し企業名の
公表基準について了承し、舛添厚生労働大臣に答申しました。
1月中に実施される予定の公表基準(5項目)は以下の通りです。
(1)2年連続で内定取消しを行った。
(2)同一年度に10人以上の内定取消しを行った。
(3)事業活動の縮小が余儀なくされていると明らかには認められない。
(4)学生に内定取消しの理由を十分に説明していない。
(5)内定を取り消した学生の就職先の確保を行わなかった。
昨年中に内定取消しを行った企業についても、上記の基準に該当すれば、
企業名が4月以降公表されるそうです。