違法とされた「異動・配転」

① 事件の概要
先日、上司の行為(取引先の社員を引き抜こうとしていた行為)
を社内にある「コンプライアンス窓口」に内部通報したことに
より不当な異動(まったく経験のない部署への配置転換)を
命じられたとして、現役社員(原告)が勤務先(被告)に異動の
無効確認と損害賠償(1,000万円)を求めていた訴訟の控訴審判決
がありました。
東京高裁は「業務とは無関係に異動を命じており、人事権の濫用に
該当する」として、原告敗訴とした1審判決を破棄し、異動は無効
であるとし、会社と上司に220万円の賠償を命じました。

② 不当・違法と判断されるケース
人事権は広く会社に認められていますが、上記のケースの他、
どのような人事異動・配置転換が不当・違法であると判断される
のでしょうか。
過去の裁判例では、(1)業務上の必要性が存在しない場合、
(2)仮に必要性が存在したとしても他の不当な動機・目的
による場合、(3)労働者に対して通常甘受すべき程度を著しく
超える不利益を負わせる場合等、特段の事情の存する場合に
おいては、人事権の濫用に該当するとしています。
なお、(2)でいう「不当な動機・目的」とは、社員を退職に
追い込む目的,上司による嫌がらせ目的等が考えられます。

③ 業務の系統を異にする職種への異動
この他、業務の系統を異にする職種への異動については、
業務上の特段の必要性、当該従業員を異動させるべき特段の
合理性があり、これらの点につき説明が十分になされた場合か、
本人が特に同意した場合を除いては、会社は一方的に異動を
命ずることはできないとした裁判例もあります。
個々の裁判例は背景にそれぞれ特殊な事情があり、他の同様の
ケースにもすべて当てはまるわけではありませんが、
会社としては、人事異動・配置転換が不当・違法なものと
判断されないよう注意する必要があるでしょう。
何かのときは、弊社にご相談下さい。

{2011年10月28日)