11月6日の第10回労働政策審議会雇用環境・均等分科会
で職場のパワハラ防止対策について、厚生労働省は
3つの案を示しました。
案のうち、①パワハラ行為を禁止して加害者への損害賠償
請求をできるようにする、 ②事業主にパワハラ防止措置を
義務づける、の2つは法制化に関するもので、もう1つが
指針の策定(法的強制力を持たせる案とそうでない案の
2案)です。労働者側と使用者側で意見が対立していますが、
公益委員からは社会的情勢を考えると法制化は当然との
意見も出ています。
これらは年内にまとめる報告書に盛り込まれ、来年中に
関連法案を国会に提出する方針とされています。
◆事業主の防止措置義務
6日の分科会では、今年3月30日公表の「職場の
パワーハラスメント防止対策についての検討会報告書」
より抜粋して、①事業主の方針等の明確化、周知・啓発、
②相談等に適切に対応するために必要な体制の整備、
③事後の迅速・適切な対応、④ ①~③の対応と併せて
行う対応としてプライバシー保護や相談・協力者の不利益
取扱い禁止、という4つが示されました。
2017年度の精神障害に関する労災補償状況をまとめた資料
によれば、請求件数は1,732件で前年度比146件増、支給決定
件数は506件で前年度比8件増です。
このうち、出来事別の決定件数は「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、
又は暴行を受けた」が186件、うち88件が支給決定され最も
多くなっています。対人関係では、「上司とのトラブルがあった」
も320件と決定件数が多く(支給決定は22件)なっています。
6日の分科会での公益委員の意見も、こうした資料を踏まえた
ものと考えられます。
厚生労働省の「平成29年度個別労働紛争解決制度の施行
状況」によれば、相談、助言・指導の申出、あっせん申請に
係る件数のすべてで「いじめ・嫌がらせ」が72,067件で最も
多く、同省は2019年度より都道府県労働局の相談員を増やし、
夜間や休日も対応する相談窓口を設けて相談体制を強化
するとしています。
企業においては、行政がパワハラ問題防止に力を入れて
いることだけでなく、従業員の採用や定着に影響することも
踏まえ、対策を検討する必要があると言えるでしょう。
(2018年11月29日)